突然ですがみなさん、東京都23区で最も大きな区はどこだと思いますか?
……我らが「大田区」です!
なぜなら、「羽田空港」が広大な面積を占めているからなんです。大田区における羽田空港の面積割合は全体の4分の1。1992年に埋め立てが進んだことにより、23区イチの面積になったんだそうです。
そんな大田区と切っても切れない羽田空港エリア。実は1日中遊べる場所だって知っていましたか? 今回は、大人気なANAの「ANA Blue Hangar Tour」で飛行機の整備を見学し、近隣の「HANEDA INNOVATION CITY」で足湯やビールを堪能した充実の1日をレポートします!
8年以上前の遠い昔に、私はANAやJALの機体工場見学に行ったおぼえがあります。「機体工場」は、一定期間稼働した飛行機を格納庫に入れ、定期整備や改修をする場所。ANAやJALでは、実際に格納庫に入って飛行機を間近で見ることができる工場見学をおこなっていて、8年前も今も、すぐに予約が埋まってしまうほど大人気なんです。
う~ん、でもそのころは「ANA Blue Hangar Tour」という名前は付いていなかったような……。気になって調べてみると、ANAの機体工場見学ツアーは2022年4月にリニューアルされ、この名前がついたようでした。結構最近だ!
「ANA Blue Hangar Tour」の特徴は、「整備の仕事」にフィーチャーした点と言えるでしょう。専門業務について座学や展示で詳しく知れるほか、触って学べる部品や工具も豊富にあります。
一方で、JALの機体工場見学は、客室乗務員やグランドスタッフの制服展示などもある全般的な内容なので、同じ機体工場見学でも全く違う体験ができそうです。予約が取れたら、両方とも行って比べてみると面白いかも! JALの機体工場見学については以下の記事でも紹介していますので、あわせてご覧ください。
羽田空港周辺で感動体験!超人気「JAL SKY MUSEUM」やご当地プリンに大満足
(※画像:「ANA Blue Base Tour」様ご提供)
ちなみに、ANAには「ANA Blue Base Tour」というもう一つの見学ツアーもあります。こちらは総合訓練所で、航空機の運航に関わる6職種(グランドスタッフ・客室乗務員・貨物・グランドハンドリングスタッフ・整備士・運航乗務員)の訓練施設や実際の訓練の様子を見学することができるツアー。今回は取材が叶いませんでしたが、このツアーも貴重な体験ができそうです……!
所在地:東京都大田区羽田旭町10-8
アクセス:京浜急行空港線「穴守稲荷」駅より 徒歩7分
https://www.anahd.co.jp/group/tour/ana-blue-base/
それでは見学へ向かいましょう! 機体工場の最寄り駅、東京モノレール羽田空港線「新整備場」駅を下車し、「ANA Blue Hangar Tour」へ続く1本道を歩きます。周りのビルはANA、JAL、ANA、JAL……航空関連の施設ばかり! 普段降りない駅で見る統一感のある景色は、ちょっと異世界のような不思議さがあって好きです。
時間が合えば、「新整備場」駅から出ている無料シャトルバスもおすすめ。「ANA Blue Hangar Tour」専用のラッピングがかわいい~! 帰りはタイミングが合い、乗車が叶いました。
いざ、施設内に入場しましょう。
ここは……! 空港か……!?
施設に足を踏み入れると、目に飛び込んできたのは電光掲示板とANAのロゴ、そして制服を着たガイドスタッフの方でした。もうここは空港だ!
電光掲示板には、「ABH004」の文字。スタッフの方が、ABHは「ANA Blue Hangar Tour」の略だと教えてくれました。なるほど、その第4便ということですね。そして行先は「Hangar1」、つまり第1格納庫です。このとっても細かいこだわり、素敵だ!
格納庫に向かう入口も搭乗ゲートのようになっています。自分のパスに書かれたQRコードをかざして入りましょう。
パスには一人ひとり、世界各国にある空港の空港コードが書かれています。私は「HAN」、ハノイ空港でした。いいじゃん、リゾートじゃん! どの空港コードがもらえるかは行ってからのお楽しみ。なお、このパスは記念に持って帰れますので、行くたびにコレクションするのも楽しいかもしれません。
で~~~っかい翼!!
ここは、「ANA Blue Hangar Tour」に来たなら写真を撮っておきたい映えスポットの1つ。ツアー出発前後の30分間、自由に見学できる展示ホールには、原寸大の翼はもちろん、ANAの飛行機や整備について学べる展示が盛りだくさんです。
人生で一度も乗ったことがないビジネスクラスのシートで足を伸ばしてみました。このままフラットシートにもなります。わ~、快適すぎて顔がとろけます。いつか乗れるようになりたい……。
展示ホールは、このように乗ったり触ったりできる楽しい体験が盛りだくさんなのですが、特に私が驚いたのが飛行機の外板についての展示でした。
この黒い紐のようなもの、なんだか分かりますか?
これはカーボン繊維。これを使用して強化プラスチックを作ります。ボーイング787の胴体や翼の外板は強化プラスチックでできているんだそう。普段乗っている飛行機がこんな柔らかそうな紐のようなものからできているだなんて……。分かっている気になっていても、本物を見ると衝撃を受けました。
また、これまでの飛行機は強化プラスチックではなく金属(アルミニウム合金)で作られていました。
こちらにも外板部分の展示がありました。
……え!?
うっっっす……。
1cmもない、0.5㎝くらいでしょうか。ちょいと摘まめてしまうくらい、ぺらっぺらの薄さです。
飛行機にとって、「いかに軽くて丈夫に作れるか」は重要な命題。プラスチックやアルミといった素材を必要最低限で使い、工夫して設計されていることが肌で分かる展示でした。
「お話し会場」での30分間の座学は、大人から小さな子どもまで「e.TEAM ANA」について分かりやすく理解できる内容になっています。小さな子どもでも飽きずに映像やお話に惹き込まれていたのが印象的でした。
なお、地味かもしれませんが個人的に、展示コーナーで一番好きだったのがコレ。
「手を振り返してくれると嬉しいです!」だって!
いつも飛行機に乗るとき、手を振ってくれる整備士さんたちが嬉しくて、ぶんぶん手を振り返しているのですが、それがよく見えていたこと、そして「嬉しい」と思ってくれていることに、なんだかキュンとしました。想い、伝わってた~!
ほっこりしたところで、いよいよ飛行機の整備がおこなわれている格納庫に潜入します。
展示ホールがある場所から、専用のエレベーターに乗って、格納庫に来ました。
うぉぉ……ひろーーーい! 写真の飛行機がなんだか小さく見えるのは、この格納庫が広大な証拠です。目の前には滑走路があるので、タイミングがよければ飛行機が離着陸するシーンも見ることができます。
これだけでも十分すぎるくらいレアな体験ですが、格納庫見学はまだ終わりではありません。
地上まで階段で降りて……
こんなに近づくことができるんです!
これはエンジン。ドックなのでエンジン間近の位置に私は立っています。エンジンの中にある「うずまき」のマークで、動いているかどうかひと目で判断できるようになっているそうです。
こちらは「ANA TECHNICAL TRAINING」と書かれた機体。整備士の育成用の飛行機なんだそうです。この日も実際に整備士の方々が真剣な表情で試験を受けていました。お疲れ様です……!
そして、見えてきたのは巨大なボーイング787(どの飛行機が格納庫に入っているかは整備の状況によって変わります)。
巨大な機体に、風を受けるために工夫された複雑な形の翼がカッコイイ! カメラで全身を収めることが難しいほど近づいています。
正面から見るとこんな感じ。あまりにもインパクトがある絵なので、飛行機好きはもちろん、写真好きにもおすすめしたくなりますね。
整備時はこのような足場を飛行機にぴったりと近づけ、横から作業することもあるそう。足場の位置は固定なので、飛行機を正確に格納しなければぶつかってしまいます。1cmのズレも許されない正確な車庫入れを、プロフェッショナルが45分~1時間ほどで行うそうです。
……と、こんな情報を軽快なトークで面白く教えてくれていたのが、同行してくださったスタッフの方。本当に知識が豊富で、スラスラとたくさんのトリビアを教えてくれました。「そうだったのか!」と何度思ったことか……。記事冒頭の「東京都で一番大きな区は?」というクイズを出してくれたのも、このスタッフさんです!
魅力的な体感型施設の「ANA Blue Hangar Tour」。冒頭で「なかなか予約が取れない」と紹介しましたが、どのように参加すればいいのでしょうか。
「ANA Blue Hangar Tour」の予約は見学希望日30日前からインターネットのみで受け付けています。開催日は火~土曜日、開催タイミングは1日4回あるので、行きたい日程を狙って30日前にスタンバイしておきましょう。1回あたりの見学人数は先着40人まで(7月以降は48人までに拡大)です。なお、これほど大充実の貴重な体験ができるのに、なんと料金は無料! 0円のクオリティじゃない……!
格納庫は半分屋外のような開放的な空間でしたので、過ごしやすい春や秋の観光にはもってこいかもしれません。興味のある方はさっそくWebサイトをチェックしてみましょう。
所在地:東京都大田区羽田空港3-5-5 コンポーネントメンテナンスビル
アクセス:
京浜急行バス「西新整備場」バス停より 徒歩4分
東京モノレール「新整備場」駅より徒歩15分
https://www.anahd.co.jp/group/tour/ana-blue-hangar/
「ANA Blue Hangar Tour」で広々とした格納庫を歩き回ったあとにぴったりの場所があります。それは羽田空港のお隣、「HANEDA INNOVATION CITY」にある「足湯スカイデッキ」です!
実はココ、プライベートでもよく散歩しに来るとっておきの場所なんですよね。本当に教えたくなかった……(笑)!
観光地にある屋外の足湯って、ちょっと汚かったり枯葉が落ちていたり……なんて経験もありますが、見てください、この足湯の透明度を!
2020年オープンのまだまだ新しい施設なだけあって、ぴかぴかで清潔感のある湯船に浸かれます。
ああ〜たくさん歩いた身体に染みわたる~~~!
おすすめの楽しみ方はなんといっても空港観賞。まったりのんびりと飛行機を眺めましょう。飛行機、さっきまであんなに近くにあったのに……。ずいぶん遠くに来たように感じますが、エリア的にはそんなに離れていません。
ズームで撮るとこんな感じ。青い空と滑走路の芝生がパノラマのようです。
この日は日中に行きましたが、個人的には夜に行くのもおすすめです。空港施設の光、管制塔の光、誘導灯の光、たくさんの光がキラキラゆらめいて、昼とは全く異なる幻想的な景色となります。
羽田空港周辺でたっぷり遊んだあとには、ぜひ立ち寄ってみてください。
所在地:東京都大田区羽田空港1-1-4 HANEDA INNOVATION CITY内
アクセス:東京モノレール 「天空橋」駅直結
https://haneda-innovation-city.com/facility/
「たくさん歩いて、温泉に入って、最後のシメにビールでも飲めたら最高……!」
そんなことを考える方も多いのではないでしょうか。
ありますよ、ビール!
さわやか~! クラフトビールの特有の個性的な色と、水色でかわいらしいお店のロゴが映えますね。
「HANEDA SKY BREWING」で醸造・提供されているのは、泡少なめのクラフトビール。
「『ビールは泡が命』という人もいるけれど、僕はそう思わないです。本当においしいビールは泡なしで飲んでほしいくらい。泡以外の本体部分をたくさん楽しんでほしいので、あえて泡を少なめにしています」と、スタッフさんがおっしゃっていたのが印象的です。
こだわりのクラフトビール、いざ実飲!
……と、いきたいところですが私はお酒が飲めないので、同行メンバーにレビューしてもらいました。
写真左側、色の薄いほうが「天空~Tenku~IPA」。この「HANEDA SKY BREWING」で誕生したビールで、飛行機を意識したネーミングもあってか、まずはこれを頼む人が多いんだとか。鼻に抜けるさわやかなフルーティーさがあり、飲んだメンバーは「スパークリングワインやジュースみたい!」と驚いていました。
写真右側、色の濃いほうは「大森貝塚エール」。大田区の大森には、個人でホップを生産している人がいるそうで、そのホップを使ったビールなんだとか。え、個人で!? 大森のどこかにホップ畑があるのかなあ、すっごい……。こちらは天空と全く異なる味わいで、麦芽の風味やのどごしの良さがあります。飲んだメンバーによると「上質な麦茶みたい」とのこと。そんな飲みやすさから、食事と一緒に2杯、3杯と飲み続けてくれるお客さんが多いらしいです。リピート率の高いビールですね。
特別に店内醸造所の機械も近くで見せてもらいました。
醸造所はガラス貼りなので、店内からも様子が見えるようになっています。運が良ければ作業しているところを眺めながら飲めるかも!
所在地:東京都大田区羽田空港1-1-4 HANEDA INNOVATION CITY内
アクセス:東京モノレール 「天空橋」駅直結
TEL:03-5579-7350
https://tabelog.com/tokyo/A1315/A131504/13248845/(食べログ)
https://www.haneda.beer/(株式会社大鵬 公式サイト)
以上、1日まるごと羽田DAYをお届けしました。ほんとうに朝から夕方まで、ずーっと羽田で過ごしていましたが、あちこちにいろんなお店やエンタメがあるので、まったく飽きなかったなあ……。
羽田にはANA・JAL機体工場見学や「HANEDA INNOVATION CITY」のほかにも、「羽田エアポートガーデン」や空港内のレストラン・ショップなどがあり、立ち寄れる場所はよりどりみどり。羽田はもはや「旅の出発拠点」だけではありません!
週末のおでかけに迷ったら、あえて羽田へ“旅”に行きませんか? 都内にいながら、きっと新たな発見ができるはずです。
本記事のライター:安光 あずみ
プロフィール:
大田区在住のフリーライター。広告代理店で営業やディレクターを経験したのち、ライターとして独立。「ぼっちのazumiさん」名義でnoteも更新中。ひとり旅や街道歩き、神社巡りが好き。大田区のお気に入りスポットは「大森ふるさとの浜辺公園」。大田区に引っ越してから幾度となく通い続けている。
監修:松本里美/三好順