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  • 2024.8.15

夏を彩る4000発の花火!家族や友人、大切な人と参加したい「平和のつどい」

大田区、8月15日というと「六郷土手の花火大会」を思い浮かべる人は多いはず。東京都の花火で3本の指に入る、なんて言う人もいるほど人気のイベントです。
川崎市出身の私は、こどもの頃から自宅近くの土手で見ていました。川を挟んでもドオォォン!と地響きまで届くような花火は圧巻で、夏休みのいい思い出になっています。そんな祭典が、今年から「平和のつどい」と名前を変え、昼と夜二部制のイベントになったと聞き、丸一日現地で参加してみることに。

「平和のつどい」ってどんなもの?

式典の由来は、40年近く前まで遡ります。大田区は1984年(昭和59年) 8月15日に、世界の恒久平和と人類の永遠の繁栄を願い、「大田区平和都市宣言」を行いました。以降、大田区では毎年平和を願う様々な催しが開かれています。
冒頭でお話しした花火大会もその一環で、大田区平和都市宣言記念事業「花火の祭典」という平和を願う花火だったんですね。そして今年からは、「平和のつどい」に名称が変更され、「第一部 平和記念式典等」と、「第二部 平和祈念花火」が開催されることになったそうです。
終戦記念日に行われるものですから、本来、平和について考える大切な機会だったわけですね。花火だけに注目していた自分をちょっと反省。せっかくなので一部からしっかり体験していきます!

家族と平和を考えるきっかけに「第一部 平和記念式典等」

第一部の開催場所は、JR蒲田駅から徒歩5分ほどで着く、大田区民ホール「アプリコ」。
平和記念式典という名前からして、厳粛なもののはず……とドキドキしていましたが、会場は思ったよりは和やかな雰囲気。当時の大田区の様子を伝えるパネル展や、お絵描き風鈴、折り鶴などのワークショップも開催されています。

到着してまず驚いたのは、小さなお子さんを連れたご家族から高齢者の方まで、本当に沢山の方が参加されていること。

終戦から復興まで、大田区の歴史が見られるパネル展示の会場では、多くの方が真剣な様子で見入っています。

パネル展では、昔の蒲田駅の姿も。今とは全然違う夜景が広がっています。

同じ会場でワークショップが開催されており、こちらは一時整理券が配布されるほど人気。親子連れの方などが、風鈴に絵を描いたり、折り鶴を折ったりしています。

こどもは真剣、親は油性ペンのフォローにてんやわんや。こんな何気ない光景にも「平和」を感じます。

お子さんが完成した風鈴を見せてくれました。とっても可愛い!

パネル展やワークショップをひと通り体験し、いよいよ式典会場へ……
ホールへと続く、エスカレーターを登った先には、星形の短冊を飾る「平和の掲示板」があり、思い思いの平和への願いが綴られています。



沢山の風鈴が来場者を迎えてくれる、涼しげなゲート。すごく綺麗なので、くぐりながら撮影しちゃいました。

13時半。ホールの椅子が徐々に埋まり、式典がはじまります。
鈴木区長や来賓の方々の「平和のつどい」開催への思いが伝えられ、題字を書かれた区内在住の書道家・金澤翔子さんのコメントなどもありました。

筆で描かれたこの題字、素敵ですよね。平和への優しい気持ちと強い決意、両方が感じられるような作品です。

そして、「平和都市宣言文」が朗読されます。下記がその全文です。こどもにも大人にもまっすぐ伝わるメッセージですね。

――――――――――――――――
『平和って なあに
しあわせな ことよ
しあわせって なあに
自由で楽しいくらしができること
だから 世界中の人と 力をあわせて
大切な 平和を守らなければ いけないの
地球上どこへ行っても 笑顔があるように…
この人類共通の願いをこめて 大田区は
平和憲法を擁護し核兵器のない
平和都市であることを宣言する』

昭和59年8月15日
大田区
――――――――――――――――

次に、東調布第三小学校合唱団と姉妹都市セーラム市学生訪問団の皆さんが参加した、手話を交えた美しい合唱が。しっとりとした雰囲気のなか、大田区公式PRキャラクター「はねぴょん」が、横で一生懸命踊っていました。

第一部はここで終了。私は合計2.5時間ほど参加していたのですが、あっという間でした(ちなみに途中参加や退出も可能ですので、都合に合わせて参加することができます)。
展示や式典を通して、本当に多くのことが学べたと思います。戦争の悲惨な経験を知るだけでなく、今ある平和に感謝したくなる、素敵な内容でした。来年は私もこどもと一緒に参加したいな。

圧巻の4000発!「第二部 平和祈念花火」

少し休憩して、第二部の花火が行われる会場「六郷土手」へと向かいます。
花火大会といえば、場所取り!場所取りといったら混雑!というイメージはあったので、私も覚悟して開始2時間ほど前に移動したのですが……

え、えぇ〜〜〜!?
電車が「六郷土手」駅に止まり、ホームから階段を降りると見たこともないような混雑っぷり。臨時の改札も開放されているようです。もちろん警察の方が複数人で交通整理をしているため、大きな混乱はないものの、この調子で会場にたどり着けるのか……
ちなみに今回、花火大会はなんと6年ぶりの開催になるそうです。コロナウィルスなどの影響で自粛していた期間があったから、皆さん本当に楽しみにしていらっしゃるんでしょうね。
会場までは人の流れの通りに進もうと歩いていると、近所のお店の親切な店員さんたちが「こっちからも土手に着くよ〜」と道を教えてくれました。

おかげで思ったよりスムーズに到着。土手で一番に目に入ってくるのは、たくさんの屋台。イカ焼きに、かき氷、ケバブ屋さんまで、美味しそうなお店が軒をつらねています。目移りしちゃいますね!

こちらは大田区商店街連合会の方々が協力してくれているそうで、屋台飯ながらお求めやすい価格のものが多いのも嬉しい。

ラムネを買って、場所を確保。
駅の混み具合を見たときは不安でしたが、土手は広々していて普通にシートを広げられます。
正直、花火大会=立ち見も覚悟の混雑というイメージが強かったので、これは嬉しい。現地に来ても、ゆっくり見られるのでおすすめです!

開始まで、夕暮れ時の空を見上げて過ごします。この時間もいいですよね……

徐々に暗くなっていき、ステージイベント開始。
特設ステージで和太鼓の生演奏が始まりました。本格的な太鼓の合奏を聞く機会って、なかなかないかも。迫力満点です。花火の打ち上げに向けて、見ている人のボルテージも最高潮に!


区長が登壇し、いよいよ会場全員でカウントダウン。
5.. 4.. 3.. 2.. 1

スタート!!

オープニングの花火は、「希望の光〜戦火と平和の交響曲〜」。
光の粒が縦横に走り、「大田区平和都市宣言記念」の仕掛け花火があらわれて、 ワァァァァ!という大きな歓声が響きます。

壮大な音楽に合わせてスターマイン(連続花火)が打ち上がります。大小の花火が、斜めに重なりあって上がる様子は「花」や「羽」のようにも見え、とても綺麗です。


続いては「ヒストリー花火〜大田区と勝海舟~」。
勝海舟のエピソードと共に色が変化し、チラチラと瞬きます。「敵味方を超えて一致団結し、人々の平和を守るべきだ」という信念から、江戸無血開城を成功させるまでのお話は感動のひとこと。緑や赤に変化する花火の色は、彼の平和に対する想いと情熱が表現されているのかなと感じました。

そして、最後を飾るのは「未来への誓い〜戦争のない世界を、私たちの手で〜」。
とくにこのスターマインは、国内でも珍しいと「円形」の配置を採用しているそう。並べられた花火が空に向かって円形に伸び、会場に白い光が広がっていく様は迫力があるのに幻想的。

そこからスターマインが連続して一気に上がっていきます。フィナーレだけで一体何発の花火が使われているんだろう?皆さん、息を呑むように静かに見入っています。

最後の花火が打ち上がり、終了のアナウンスが流れると、少しの沈黙のあと、会場の至る所から拍手と歓声があがり始めました。感動している様子が伝わってきます。
そんな様子を見ながら、私の心に浮かんだのは「平和な日常」を送れることへの感謝の気持ちでした。大切な人はもちろん、知らない人ともいっしょになって、こんな感動をシェアできるのって、本当に素敵なことですよね。
第一部の平和記念式典から参加していたこともあり、「平和」の尊さを改めて実感できる体験となりました。「平和のつどい」、 ぜひ大切な人を誘って参加してみてください。

 

 


プロフィール:さえぐさ青 -aoi-
川崎市在住のライター・コピーライター。
大田区に歩いてわたれる多摩川沿いの街に生まれ、大鳥居にあったセガ本社に勤務。その後広告制作会社を経て独立。SDGsや観光、美容、健康など幅広いジャンルの取材活動と広告制作を続けている。
X(Twitter)では「書くことと、生きること」をテーマに、クリエイティブへの思いや、日々の発見を発信中。好きなスポットは「水辺」と「こどもの遊べる場所」。大田区では平和の森公園や羽田空港がお気に入り。

監修:松本里美/三好順