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  • 2024.8.4
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プロと一緒に音楽劇に挑戦!羽田空港で行われた『赤毛のアン』特別ステージに密着してみた

地元の演劇サークルや歌のサークルは数あれど、プロの声楽家や演出家と一緒に、大きな舞台を目指す機会はそう多くありません。

大田区で活動する一般社団法人EXPRESSIONは、プロの声楽家や指揮者、演出家、演奏家と一緒にステージを作り上げています。

最新作『赤毛のアン』を上演するステージは、なんと羽田空港に直結している羽田エアポートガーデン!

一体どんなステージが待ち受けているのか、稽古場から本番まで密着させていただきました!

名作『赤毛のアン』と大田区の深い繋がりとは?

おしゃべりが大好き、少し変わり者の赤毛の女の子がやってきた!アンがカナダの美しい島、プリンス・エドワード島で過ごす日々を描いた『赤毛のアン』は、カナダの作家L・M・モンゴメリによる言わずと知れた児童小説です。

世界中から愛されている『赤毛のアン』、実は大田区と深い繋がりがあるのをご存知でしたか?

『赤毛のアン』を日本で初めて翻訳した翻訳者・児童文学者でもある村岡花子さんは結婚後、大田区に住んでおり、『赤毛のアン』を翻訳・出版しました。つまり日本語訳の『赤毛のアン』はここ、大田区で生まれたのです!!

2014年に朝のNHK連続テレビ小説『花子とアン』でも描かれていたので、ご存知の方も多いかもしれません。花子役の吉高由里子さん、とっても可愛らしくて素敵でしたよね!

ということで、大田区在住の小学生や大人のメンバーが中心となり構成されている一般社団法人EXPRESSIONでは、2019年にカナダと日本の国交樹立90周年を記念してオリジナル音楽劇『赤毛のアン』を制作し、上演。

2024年は、モンゴメリ生誕150周年ということで、なんと羽田空港第3ターミナル直結の羽田エアポートガーデンにて特別ステージが実現することになりました。

EXPRESSIONさんはNHKやテレビ朝日等でキャスター・リポーターとして活躍した黒田育美さんが2012年に友人らとスタートした「ことばで奏でる音楽会実行委員会」としてスタートし、2015年に「EXPRESSION」に名称を変更。2017年に一般社団法人化されました。

表現力・発信力の向上を通じて子どものコミュニケーション能力の育成を行うことを目的とし、ワークショップや音楽劇等のコンサートの上演、チャリティ活動などを行っています。

EXPRESSIONの稽古場に潜入!

今回は特別に、大田区の中学校で日曜日に行われているEXPRESSIONの稽古場にお邪魔しました。(通常レッスンは月に2回。『赤毛のアン』の特別ステージに向けてはほぼ毎週、稽古が行われていました)

教室に入ってみると、ちょうど歌の稽古中! 9歳から89歳まで、幅広い年代のメンバーが真剣に取り組んでいます。

『赤毛のアン』には演出・大原晶子先生、指揮・小屋敷先生を始めとするプロのクリエイターの方々が参加しており、「もう少し言葉がはっきり聞こえるように歌ってみて」「ここのフレーズは、アンに親しみをかけて呼びかけるように」など、真剣に、時に厳しい声が飛びます。

思った以上に細やかで本格的な指導が行われており、レベルの高さを実感しました。

さらに、アンを引き取ることになるマリラとマシューには、プロの声楽家である田川理穂さんと田中夕也さんが参加!

稽古場で何よりも驚いたのは、二人の声の圧の凄さ!!

声楽家の方の歌唱を生で堪能するのは初めてだったので、体ごと吹っ飛びそうなくらいの迫力の歌声に、思わずあんぐりと口を開けてしまいました。

しかしそんな私とは違い、EXPRESSIONメンバーの皆さんはお二人に負けじと歌声を響かせます。

これを毎週やっているなんて。子どもたちにとっても、そして大人たちにとっても間違いなく感性が刺激される時間に違いありません! う、うらやましい…!

練習に参加したEXPRESSIONメンバーにインタビュー

稽古が終了後、皆さんにお話を聞くことができました。EXPRESSIONの最高齢89歳である女性は、ヴァイオリニストの娘婿さんが2019年上演の『赤毛のアン』に演奏者として出演することになったことから、自身も参加するようになったのだとか。89歳にして、5年ぶり2度目の出演となります!

結婚前には演劇活動に取り組んでいたものの、現在はすっかり離れていた歌と再び向き合う日々。「新鮮な気持ちで大いに楽しませてもらっています」と笑顔で語ります。

また「子どもたちは私のひ孫でもおかしくないくらいの年齢なの。子どもたちがとっても素晴らしいので、力になっています」と子どもたちにもパワーをもらっているようです。

アンの親友ダイアナを演じる女の子は、お母さんと一緒に親子で参加。ここで歌やお芝居を学んでみて、「すごく楽しかったので、学校でも演劇クラブに入って、演劇を頑張っています」と教えてくれました。

「空港という大きな舞台は初めてで緊張しているんですけれど、ダイアナになりきって、ダイナミックに演じたいです」と意気込みを語る姿は、すっかり役者の顔です。

ギルバート役を演じる男の子は、お姉ちゃんが前回のEXPRESSIONの公演に出たことをきっかけに、「自分もやってみたい!」と参加。

「セリフを喋るのも初めてで難しいんですけれど、頑張ってます! プロの先生に歌を習えて嬉しいですね」と語ります。休憩中はみんなと元気いっぱいに遊びながら、練習中はスッと切り替えて、真剣に練習に取り組んでいました。

主役のアンは、一部と二部で別々の子、いわゆる「Wキャスト」で演じます。アンをやりたい!という子が多かったそうで、オーディションで選ばれました。

二部でアンを演じる女の子は、小学生の頃からEXPRESSIONに参加し、今は中学3年生に。すっかりお姉さんになり、受験勉強と両立しながら練習に取り組んでいます。

「アンのキャラクターが凄く好きです。自分とは正反対の性格。色々なことに興味津々で、気持ちをすぐに表に出しているところが羨ましい」とアンについてもしっかりと分析中。

「本番は通りすがった人たちが足を止めてもらえるように、気持ちを込めて頑張ろうと思います」と意気込みを聞かせてくれました。

ご夫婦で参加されているお二人は、元々は田川理穂さんのファンだったそう!

田川さんのYouTube動画を見て、学生時代から歌を歌うのが好きだった奥さまが田川さんに歌を習ってみたいと参加を決意したのだと言います。

「田川先生にお目にかかりたくて」とEXPRESSIONの見学に来た奥さまと、最初は付いてきただけだったという旦那さま。

「でもそこから楽しくていつの間にか2人で参加していて」と笑顔で顔を見合わせます。

推しに会うだけでなく、一緒のステージに立つなんて、夢のようですよね。

そして今では本番に向けて、ご自宅で2人で練習をしているのだそう。

プロとして参加する田川理穂さんは、「歌うことは語ること」という想いで普段から活動されており、言葉を大切にする黒田育美さんの想いに共感し、EXPRESSIONに参加するように。

「大人の皆さんに教えていることを子どもたちが聞いていて、自分たちを振り返ったり、その逆もあったりするので、3世代の方々が参加していることでの楽しさがあります。子どもたちが“さっきのはどうやって声を出しているの?”“こういう想いを訴えたいんだけど、どうやって歌ったら良い?”と聞きに来てくれるので、とてもやりがいを感じます」と語ります。

子どもたちは真剣に、プロの皆さんとご一緒する機会を楽しんでいるようです。

本番当日のリハーサルにも密着!はねぴょんも『赤毛のアン』仕様に

8月4日、羽田エアポートガーデンに到着すると、入り口の大きなデジタルサイネージや、至るところに『赤毛のアン』ステージの告知が!

エスカレーターを下った1階のグランドホワイエ中央にあるやぐらステージ。実際に見るとその存在感は圧巻で、周囲にはレストランがあるため、外国人観光客の方々も行き交う場所です。

そして普段のやぐらステージは松の絵が描かれていますが、今日は、カナダのプリンス・エドワード島にあるアンの家のモデル「グリーンゲイブルズ」の写真に!


大きなセットも置けないやぐらステージの広さで、どのように『赤毛のアン』の世界観を実現させるのかと疑問に思っていましたが、なるほど!これで一気にプリンス・エドワード島が出現しました。

舞台は三方向に開かれているので、もちろんエスカレーターや2階からもばっちりと見えます。


これは多くの方に見ていただけるのでは……、期待に胸を膨らませながらリハーサルを見守っていると、待ちきれずに到着した出演者のご家族が早速楽しんでおられました。

そして大田区公式PRキャラクターのはねぴょんも遊びにやってきました!子どもたちに囲まれるはねぴょん、さすがの人気です!

ステージの横には大田区の魅力発信の観光ブースや、カナダ&プリンス・エドワード島の紹介ブースが設置され、はねぴょんも大田区の魅力をしっかりPR!

そして今回のイベント限定で、『赤毛のアン』とコラボした缶バッチも誕生!可愛いーーー!

EXPRESSIONメンバーの皆さんも、本番前にはねぴょんとハグや写真撮影。しっかりエネルギーをもらっていました。

本番直前の楽屋の様子は…?

ギリギリまでリハーサルを行い、衣装やメイクに忙しい出演者の皆さん。

さぞ緊張感に溢れているのではと恐る恐る楽屋に伺ったところ、「こんにちは〜!」「あ!隠し撮りするんでしょー!」と皆さん笑顔で出迎えてくれました。

主人公のアンを演じる女の子も、「おじいちゃんおばあちゃんと友達が来ているから、頑張らないと!とても楽しみです」と、なんとまぁ余裕の表情!驚いちゃいました。

皆さんの温かい空気感と堂々とした佇まいは、稽古場で感じたまま。集合写真を撮ったら、いざ本番のステージに向かいます!!

遂に本番! 勝手に親戚のような気分で見守ります

本番のステージの前には、観覧エリアいっぱいにたくさんのお客さんが。出演者のご家族やご友人はもちろん、行き交う人々も一体何が始まるのかと立ち止まってステージを見つめます。

そして遂に『赤毛のアン』のステージが開幕!

練習の成果を発揮し、キラキラとした瞳でそれぞれの役を演じるEXPRESSIONの皆さん。美しいハーモニーを響かせ、アンと島の人々の交流を豊かに描いていきます。

「信じ合い、支え合い、人は生きていく」

歌詞に込められたメッセージは、年齢を超えて、歌で繋がり合う皆さん自身にも重なります。

今回は歌を中心に構成された40分間という短いステージですが、『赤毛のアン』の魅力はぎゅぎゅと詰まっています。

アンが教会に行く道中にお花を摘んでいたため、帽子がお花の山になってしまったエピソードは、大人の皆さんも一緒に賑やかに。

クラスメイトのギルバートに赤毛をからかわれ、タブレット黒板でギルバートの頭を叩くという破天荒っぷりを現したエピソードも再現されています。

個性的ながら、周囲の人々を惹きつけ、マリラとマシューを癒していくアン。改めて、『赤毛のアン』ってなんて温かい素敵な物語なのでしょう。

また会場では多くの子どもたちがじっとステージを見ていて、この中から未来のアンやギルバート、ダイアナが生まれるのかも、と思うと胸が熱くなります。

終演後、「上手だったわね」「素敵でしたね」と言い合うお客さんの声が耳に入ってきて、心の中で「そうでしょ!そうでしょ!!」と何故か自慢げな気持ちになってしまいました。

「アンは愛、アンは光♪」耳から離れない皆さんの素敵な歌声を思い返しながら、とっても温かく、幸せな気持ちで空港を後にしました。

EXPRESSIONは現在メンバーを募集中とのこと! 子どもと一緒に親子で、夫婦で、もちろんおひとりでの参加もOK。

今回のような大きなステージへの挑戦はもちろん、小児がんや重い病気と闘う子どもたちを支援するチャリティー・コンサートの開催、病院や高齢者施設の慰問コンサートなどを通じて、「誰かの役に立つこと」の喜びを感じることができます。

体験レッスンは無料で出来るので、ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。とても温かい雰囲気なので、気軽に参加してみてくださいね。

体験レッスンの詳細はこちら

Homepage: https://expression2016.wixsite.com/stage
Instagram:https://www.instagram.com/expression8629/
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100064517959263

【対象年齢】
子ども部門:小学2年生~高校3年生(小学1年生は要相談)、大人部門:年齢制限なし【レッスン日時】
月2回 日曜日(子ども:13時~16時、大人:14時~16時)※時間は変わる場合もあります。イベントの前はレッスン日が増える場合もあります。

【レッスン会場】
大田区 田園調布内の施設 (予定)

【レッスン内容】
発音滑舌、歌唱、ダンス、演技、他 (大人は主に 発音滑舌、歌唱)

【講師】
発音滑舌・歌唱・ダンス他、内容に応じて各分野のプロフェッショナルが講師を務める。

【入会金】
10,000円(公式Tシャツ代含)※大人メンバーは入会金なし。公式Tシャツ(2,500円)を購入いただきます。

【会費】
子ども(月会費)8,000円/月、大人(回数払い)3,000円/1回
※ 兄弟姉妹割引、親子割引あり。イベント出演の際は、別途、レッスン代や参加費がかかる場合もあります。

【本記事のライター】齋藤優里花

【プロフィール】
慶応義塾大学文学部卒業。JTB首都圏(現:JTB)、リクルートコミュニケーションズ(現:リクルート)にて勤務したのち、独立。マーケティングからweb制作ディレクション、取材・ライティング、メディア運営と幅広く活動。演劇専門のwebメディア「Audience」を2020年に立ち上げ、“生きてて、よかった。そう思える瞬間が、演劇にはある”を伝えるために奮闘中です。
今回の取材で出会ったはねぴょんに一目惚れ。可愛い動きに虜でした。

監修:松本里美/三好順