特集
features

  • 2024.8.8
  • グルメスポット

大田市場ってどんなところ? 一般人代表な私が見学&ランチしてきた

あなたは「大田市場(おおたしじょう)」って知っていますか?

大田区民の私でも、(旧)築地市場や豊洲市場は行ったことがあるのに、大田市場はその存在さえ恥ずかしながら知りませんでした。

ファンシーな花飾りがついた建物。実はココこそ、大田市場なんです。

・一般人でも入れるのかな?
・セリが見れるのかな?
・市場ってことは、新鮮なグルメが食べられるのかな?
・なんで「花」なんだろう?

……意外にも身近にあった市場に、興味が尽きません。市場には普段全く縁のない私ですが、せっかくなので「一般人代表」として大田市場に潜入してみることにしました!

大田市場とは

大田市場は、平成元年に開設された、東京ドーム8.5個分もの広~い敷地がある日本最大級の市場です。青果部・水産部・花き(かき)部という3つの部門があって、青果部・花き部は日本一の取扱規模なのだそう。

ちなみに「花き」とは、観賞用の植物全般を指す言葉。建物に花飾りがついていたのは、花の市場があったからなんですね! 花以外にも、鯛やブドウといった縁起物の「つまかざり」が各棟に掲げられていて、とてもかわいらしいんです。

なお、大田市場は一般人の見学も可能。JR、京急「品川」駅、JR「大森」駅、京急「平和島」駅より、バスで向かうことができます。実は、東京都に11カ所ある中央卸売市場のなかで、見学施設や見学コースがあるのは大田市場と豊洲市場だけ! ふらっと見学に行ける希少な市場なんです。

早起きが苦手でもOK! 午前10時からゆったり大田市場を楽しんでみた

セリが開始されるのは、朝5時半~7時ごろ。この時間に行けば、見学コースからセリを見ることができますが、「ちょっと早いなあ……」と感じる人もいますよね。私もです。

どうやら大田市場では、セリの時間外でも見学やグルメを楽しめるらしいので、今回は10時ごろに行ってみました。

見学の最初は展示室から。市場のなかで働く車、「ターレット」が2台お出迎えしてくれます。大田市場にはターレットがおよそ1,100台、フォークリフトがおよそ1,200台も行き来しているそうです。

展示室で市場について学んだら、さっそく見学コースへ進んでいきましょう!

おお……

おお! かっこいい!

展示室の事務棟から市場棟へ渡るデッキは、ガラス張りでなんだか未来的。テーマパークでアトラクションを待っているときのようにワクワクしてきました!

青果棟を見学! あの箱には何の果物、野菜が入ってる?

大田市場の青果棟は果物や野菜の取引がおこなわれる場所。見学した10時半ごろはせりが終了し、仲卸業者が仕分けや運搬をしているタイミングでした。

なんて広い場所なんだ……! さすが、日本一の取扱規模を誇るだけあります。

あ! 展示室で見たターレット!それにフォークリフトも!
……って、とんでもないスピード感! 縦横無尽に走り回り、サクサクと果物や野菜が運ばれていきます。手慣れたお見事な運転は、一見の価値ありです。

もう一つ、青果棟で楽しかったのが、この日の参加メンバー同士で行った即席クイズ大会「青果の種類当て」でした。
上の写真のピンクの箱は、すべてスイカです!

こっちにはミカンを発見!

こっちはマスカット、ブドウ、プラム、桃と盛りだくさん! 「あっちにキュウリがある!」「こっちはトマトだ!」なんて、みんなで箱を見つけては盛り上がりました。

水産棟を見学! この臨場感は大田市場ならでは?

大田市場の水産棟は魚介類の取引がおこなわれる場所。1日あたり14トンもの魚介類が取引されています。

わ!! マグロかな?

ごろんとパレットのうえに横たわるマグロたち。青果棟より見下ろす距離が近く、臨場感があります。豊洲市場だとガラス越しの見学になるので、ガラスを挟まずこの距離から見学できるのは、大田市場水産棟ならではの良さかもしれません。

ちなみに、水産棟は毎月第4土曜日の6~9時ごろまで、「さかなの日」として一般に開放されています。新鮮な魚、珍しい魚にお買い得価格で出会えるチャンス! ぜひ狙って行ってみてください。

大田市場水産棟「さかなの日」開催!

花き棟を見学! 「市場」っぽくないハイテク空間にびっくり

水産棟まで見終わったら、いったん外に出て5分ほど歩き、お隣の敷地にある花き棟へ向かいましょう。大田市場の花き棟は花や観葉植物などの取引がおこなわれる場所です。

花き棟ではガラス越しにセリがおこなわれる会場を見ることができました! ディスプレイがたくさんならんでいて、「セリ」というより「オークション」という言葉が似合います。

ここは日本で初めて、機械を使った「下げせり」と呼ばれる徐々に値段が下がっていくセリを導入した場所。花の命は短いからこそ、鮮度の高いうちに出荷できるよう、セリ時間を短縮する工夫がされているんだそうです。

花や観葉植物が流れてくるであろうレーン。あちこちが機械化された工場のようで、青果・水産とはまったく違う雰囲気を感じました。

花き市場の見学ってなかなか聞いたことがありませんし、この機械が動いているところも気になります。セリをやっている時間帯に再訪してみようかな……!

ランチやお土産探しにぴったりな
「やっちゃば横丁」

敷地の広い大田市場を歩き回っていると、あっという間にお昼どきです!

せっかく市場に来たのだから、新鮮な食材を使ったここだけのグルメが食べたいところ。そんなときは関連棟にある「やっちゃば横丁」に向かいましょう。

ザクふわ食感の生アジフライがおいしい
「味の店 双葉」

「味の店 双葉」は新鮮な素材にこだわった大衆食堂です。お客さんの9割は市場関係者や、農協の人、漁連の人たち。「食のプロ」たちにも好まれる本格派でありながら、どこか親しみやすく懐かしい雰囲気のお店です。

気になったのがお店の看板に書いてあった「生アジフライ」という文字。「生」ってなんだ? どんな味なんだろう……?

せっかくなので、看板メニューである「生アジフライ定食(1,000円)」と「マグロのかま定食(1,000円)」を注文してみました。

黄金色に揚がった生アジフライに箸を入れると、ザクッといい音!

ザクザクの衣に、ふわりとほどける軽やかなアジがたまりません。アジフライで「甘い」と感じたのは初めてかも。骨がついてないので食べやすく、全く臭みはありませんでした。

なお、「生」といっても火が通っていないわけではありません。「生」の理由を店主さんに聞いてみると、「毎日、冷凍していない生のアジを仕入れているから」とのこと。なるほど、これまでアジフライが生か冷凍かなんて気にしたことがなかったけれど、全然違うものですね……!

こっちはピッカピカのマグロ!

マグロのかま煮はこってりジューシーな脂の乗った本マグロに、あまじょっぱいタレがよく絡みます。こちらも冷凍せず仕入れているそう。「厳密にはかまではなく、マグロ1本につき1つしかとれない希少な『喉』の部分なんだよ」と、耳より情報も教えてもらいました。

「みんなで分けて」とテーブルに置かれたのは、ボウルいっぱいの大根おろし!

実はコレ、市場で働く人たちに大人気のサービスなんだそうで、2人でこの量をぺろりと食べきるお客さんも多いんだとか。たしかに、食べ応えのある定食とさっぱりした大根おろしは相性抜群。スタミナがついて、仕事に精が出そうです!

魚は豊洲市場や大田市場から、野菜はすべて大田市場から仕入れているそうで、この大根おろしも立派な市場グルメ。「市場といえば海鮮」だけではないところが、大田市場の魅力です!

味の店 双葉

営業時間:5:30~14:30
TEL:03-5492-2882
https://www.otashijo-kanren.jp/shop/425

コスパ抜群!新鮮魚介てんこ盛りの海鮮丼が食べられる
「海鮮丼屋 基集」

「海鮮丼屋 基集(きしゅう)」は元フレンチシェフの店主と、海鮮の仲卸業者の娘である女将さんが切り盛りする海鮮丼のお店。もうそれ、すでにおいしそうじゃないですか……!

お店の名前を冠する「基集丼(2,000円)」と、「特選バラちらし(1,000円)」を注文しました。

基集丼には、店内にあるボードに書かれた「本日のお魚」がすべて乗っています。この日は本マグロ、サーモン、海ぶどう、ヒラマサ、黒ムツなどバリエーション豊かな20種類! なんて贅沢なのでしょう……。

お好みで、海苔巻きのようにして食べるのが基集スタイル。海苔は大田区東糀谷の海苔問屋「田庄(たしょう)」のものを使っているんだそうです。

これだけ上質な魚をこの価格で、こんなにたくさん食べていいのだろうか……と罪悪感が湧いてしまうほどの一品でした。

特選バラちらしは特製の甘だれが使われていて、海鮮丼とはまた違った食欲をそそる味わい。酢飯がしっかり効いていて、漬けてある魚と相性抜群です!

海鮮丼をおいしくいただいているなか、驚いたのは常連さんと店主さんとの会話。

「バスが20分後に出るから早く出せるのをちょうだい」という常連さんに、「じゃあそうめんでどうかな」と答える店主さん。

え!? 「おまかせ」で注文できるの!?

詳しく聞いてみると、常連さんには特別サービスとして、パスタやそうめん、カレー、トムヤムクンなど、さまざまなメニューをその日のアドリブで作っているとのこと。

常連さんでなくても、メニューにあるパスタは注文可能です。初回はもちろん海鮮丼を味わいたいものですが、次回は元フレンチシェフが作るパスタも、食べてみようかな……!

海鮮丼屋 基集

営業時間:7:00~14:00頃(市場の休み明けは7:30開店)
TEL:03-5755-9990
https://www.otashijo-kanren.jp/shop/279

専門店の「だし」をお土産にいかが?
「伊勢重」

市場グルメを楽しんだあとのお土産探しにぴったりなのが、だし素材専門店「伊勢重(いせじゅう)」。こちらもお客さんの多くは業者や飲食店というプロ仕様のお店ですが、「伊勢重を目当てに大田市場へ来た」という一般のお客さんもいるんだそう。だしにこだわるすべての人におすすめの専門店です。

ほぼ毎朝店内で削っているという「鰹けずり節」。特別に削っているところを間近で見せていただきました!

専用の削り機に削る前の「節」を入れると……

数秒もしないうちに、ふわふわのけずり節が新雪のように積もっていきます!

同時に、強く香ばしい鰹の香りがお店全体にただよいました。よだれが出てしまいそうです。

なんと、削りたてを1枚いただけることに!

鰹節って、削りたてはこんなにツヤツヤ、ピカピカしているんですね。口に入れると、噛むたびにじゅわじゅわと濃厚な鰹のだしが染み出してきます。もう、ずっと噛んでいたい……。

お土産には「糸けずり(540円)」を選んでみました。

普通のスーパーではなかなか見かけない、市場ならではの珍しい商品です。血合いを除いたうえで、通常よりも細く削っている、手間ひまのかかったけずり節で、主に高級飲食店などで使われるのだそう。家で高級店の味を楽しんでみます!

伊勢重

営業時間:5:00~12:00
TEL:03-5492-2970

https://www.otashijo-kanren.jp/shop/289

誰でも見学可能な大田市場を覗いてみよう

今回は大田市場の見学コースや「やっちゃば横丁」でのグルメ、お土産を紹介しました。

印象的だったのは、市場のみなさんが口々におっしゃる、「いちばんは市場関係者のために。そのうえで、一般の人も気兼ねなく来てほしい!」という言葉。一般人ウェルカムな雰囲気で、温かい気持ちになりました。

早起きしてセリを見るもよし、ゆっくり行って食事を楽しむもよし。あなたも気軽に、大田市場ならではの空気を体感してみてください!

大田市場

所在地:大田区東海三丁目2番1号
アクセス:JR、京急「品川」駅より都バス、または、JR「大森」駅・京急「平和島」駅より京急バス いずれも「大田市場」行
見学可能時間:5:00~15:00
休市日:休開市日カレンダーに準ずる
TEL:03-3790-8301
https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/info/03/

本記事のライター:安光 あずみ

プロフィール:
大田区在住のフリーライター。広告代理店で営業やディレクターを経験したのち、ライターとして独立。「ぼっちのazumiさん」名義でnoteも更新中。ひとり旅や街道歩き、神社巡りが好き。大田区のお気に入りスポットは「大森ふるさとの浜辺公園」。大田区に引っ越してから幾度となく通い続けている。

監修:松本里美/三好順