昔ながらの商店街を中心に、キラリと光る小さなお店が点在する大田区・馬込エリア。個性的なパン屋さんが集まるエリアでもあり、外観がかわいいパン屋さん、かわいい見た目のパンが人気のパン屋さんなどが街に溶け込んでいます。
そこで今回は、馬込エリアのかわいいパン屋さんを巡ってみることにしました。どんなパンたちに出会えるのでしょうか。期待を胸に、都営浅草線「西馬込」駅からパン屋さん巡りのスタートです!
まず向かったのは、西馬込駅の目と鼻の先にある「MAISON ICHI(メゾン・イチ) 西馬込店」。代官山で人気のブーランジェリーの1号店で、グルメサイトの「パン百名店」に選出されたこともあるとの前情報に、否が応でも期待が高まります!
入店してみると、色鮮やかなオレンジの壁や木のテーブルがあたたかい雰囲気で、フランスの風を感じる洗練された店構えながら、気取った感じはありません。おしゃれなのに親しみやすい、このバランスが絶妙です。
店内にはころんとしたまぁるい形のパンがたくさん。主力のハード系のパンのほか、食パンやクロワッサンなど、いろいろなパンがあって迷いましたが、スタッフの方に個人的なおすすめを聞きながらいくつか購入してみました。
人気No.1の「いちじくとピスタチオ」(334円)は、噛めば噛むほどピスタチオとドライいちじくの味が広がる滋味深い味わい。派手さはありませんが、だからこそ毎日食べても飽きなさそう。ピスタチオといちじく本来の風味が楽しめるので、人気だというのもうなずけます。
むちむちの赤ちゃんの脚みたいな形がかわいい「しおパン」(259円)にも注目です。噛みごたえのある適度な硬さの生地の中はしっとりもっちりで、塩気が後を引くクセになる味わい。こうして書いているとまた食べたくなってきました……。シンプルなので、食事と一緒に食べたり、ジャムを塗って甘さとしょっぱさのハーモニーを味わったりと、いろんな楽しみ方ができますよ。
表面はサクサク、中はしっとりモチモチの生地と香り高い紅茶のハーモニーが堪能できる「紅茶のメロンパン」(345円)をはじめ、スイーツパンも充実。
ちょっとした手土産などには、シチリア島ブロンテ産ピスタチオを使ったクリームをサクサクのパイで包んだ「カンノーリ ~シチリアンピスタチオ~」(410円)もおすすめです。なめらかなクリームが口の中でとろけてすっと消えていくような感覚に驚くはず!
厳選した小麦と液体天然酵母を使用しているというだけあって、とにかく生地の質が高い「MAISON ICHI」。値段は少しお高めでも、その価値は十分に感じられました。
所在地:東京都大田区西馬込2-2-1 小沢ハウス1F
アクセス:都営浅草線「西馬込」駅の西口からすぐ
TEL:03-5742-5162
https://maison-ichi.jp/
次におじゃましたのは、レトロなたたずまいが印象的な「サカエヤベーカリー」。グルメ雑誌などでも紹介されている、知る人ぞ知る老舗です。
ひっそりとした商店街を歩いていると、昭和の香りが濃厚な「サカエヤ」の看板が目に飛び込んできました。え、めちゃくちゃエモくないですか!? 今をときめく監督のアニメ映画から飛び出してきたかのよう。「引き戸を引くとこの先に別世界があったりして……」なんて想像したくなるほど、「MAISON ICHI」とはまた違った意味でワクワクします。
こぢんまりとした店内に所狭しとならぶのは、外観同様「古き良き昭和のパン」といった趣のパンたち。菓子パン・惣菜パンともにたくさんの種類がありますが、日常的に食べられるよう、奇をてらわず、シンプルなパン作りを心がけているそうです。
「サカエヤベーカリー」のアイコン的存在となっているのが、「コアラパン」(200円)をはじめとする動物をかたどった菓子パン。子どもの視界に入るよう、動物パンは下の棚に並べているという心づかいも素敵です。卵アレルギーのあるお子さんでも安心して食べられるよう、「サカエヤベーカリー」のパンはすべて卵を使わずに作られているそうです。
せっかくなので、動物パン3種と総菜パン1種を購入してみました。メディアでも紹介されている「コアラパン」(200円)は、現オーナーの祖父にあたる先々代が、1980年代のコアラブーム下で作り始めたという人気商品。頭にカスタードクリーム、身体にチョコレートクリームが入っていて、2つの味が楽しめるのもポイントです。「パンダパン」(180円)は子ども時代を思い出すような昔なつかしのクリームパン。今どきのとろけるような質感ではなく、少し硬めのクリームがまた味わい深いんですよね。
個人的に気に入ったのが「かめろん」(180円)。つぶらな瞳がとってもキュートで、見れば見るほど愛着がわいてしまいます。「こんなにかわいい子を食べるなんて……」と思いつつ、意を決してかじってみると、意外にも中はオレンジ色のクリーム。しっかりと赤肉メロンの風味がしました。
ちょっとしたランチや軽食にもぴったりの「鶏ごぼうメンチカツ」(220円)は、ごぼうが香ばしいメンチカツとてりやきソースが相性抜群。なつかしいのに新しい一品です。
お店のたたずまい通り、味わいもレトロな「サカエヤベーカリー」。3代目オーナーの親しみやすいお人柄もあいまって、古き良き時代のあたたかさに触れた気がしました。
所在地:東京都大田区西馬込2丁目3-11
アクセス:都営浅草線・西馬込駅から徒歩約5分
TEL:03-3777-3085
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131713/13119581/
次に目指したのは、「馬込ブーランブーラン」。静かな商店街を歩いていると、突如としてメルヘンチックなクリームイエローの建物が出現しました。
かわいくちょっぴりゆるい感じで「パン屋」や「やってます」と書かれた看板が味わい深く、ここを素通りするなんて無理な相談というものです。
素朴な食パンのイラストにも心がなごみます。
「どんなパンたちと会えるかなぁ」と店内に足を踏み入れてみると、棚にはヨーロッパを中心とした各国のパンがずらり。フランス、ドイツ、イタリア、ロシアなど、さまざまな国の食事パンや菓子パンが並んでいて、その種類の多さと多国籍ぶりに目を見張ります。面白いところでは、イラク出身のお客さんから教えられて作ったという、バクラヴァ(中東を中心に食べられるお菓子)もありました!
生地の種類だけでも20種類以上。それをオーナーが早朝から1人で作っているというから驚きです。地元の人に親しまれている「街のパン屋さん」ながら、少々珍しいパンやひねりのきいたパンもあるので、選ぶ楽しさはピカイチです。
迷いながら選んだパンのひとつが、キャラメルとバナナがベストマッチの「キャラメルバナナ」(200円)。チョコレートが入ったパンは多いですが、キャラメル風味のパンは意外と少ないですよね。バナナの果肉がしっかりと入っていて、バナナ本来の風味が感じられる優しい味わいです。
フランス・アルザス地方の伝統菓子「クグロフ」(300円)は、レーズンだけでなくオレンジピールやレモンの皮のすりおろしが入っているので、後味爽やか。軽くトーストすると外はサクッ、中はふんわりの食感が楽しめます。本場フランスのクグロフもいくつか食べたことがありますが、個人的にはフランスのクグロフよりパサつきの少ないこちらのほうが好みでした。
食事パンもユニークなものが多数。ボロネーゼパスタをパンにしたかのような「カルツォーネ」(190円)は、ぜひ温めて中のチーズをとろけさせてから味わっていただきたいです。
多国籍なラインナップでちょっとした旅行気分も味わえる「馬込ブーランブーラン」。ぜひ、知らなかったパンやお菓子との出会いを楽しんでください。
所在地:東京都大田区南馬込5-26-2
アクセス:都営浅草線「西馬込」駅から徒歩約5分
TEL:03-3774-5780
http://www1.speednet.ne.jp/~boulanboulan/index.html
最後に訪れたのは住宅街にひっそりとたたずむ「ひよこぱん」。前にご紹介した3軒とは少し離れたところにあり、都営浅草線「馬込」駅が最寄りです。「本当にこんなところにパン屋さんがあるの? 」と思ってしまうほど閑静な住宅街を歩いていると、カウンター形式の小さなパン屋さんを発見しました!
脱力系のひよこのイラストがとってもかわいくて、見ているだけで頬がゆるみます。
ショーケースに並ぶパンは、数は多くないものの種類は豊富。お客さんが地域の常連さんばかりだからこそ、飽きないようにたくさんの種類のパンを用意しているのだそうです。
看板商品は、ひよこの顔が描かれた「ひよこぱん」。黄色くてまぁるい、焼く前の生地の見た目がひよこに似ていることから名づけられました。ベーシックな「ひよこぱん」(200円)は何も入っていないシンプルなパンながら、中の生地がシフォンケーキに近いくらいふんわり柔らか。噛むと口の中にじんわりと優しい甘さが広がり、何度でも食べたくなるおいしさです。
パンだけでなく焼き菓子の人気も高く、クッキーが店頭に並ぶとすぐに売り切れるそう。今回は「アールグレイとホワイトチョコ」のスコーン(270円)を購入してみました。外側はザクッに近いサクッ。この硬さがたまりません……。紅茶が香り高く「ほかの焼き菓子も絶対においしいだろうな」と思わされました。
ほかにも、噛んだ瞬間「サクッ」と音がするほど軽く繊細な生地を重ねた「チョコクロワッサン(ミニ)」(250円・写真左上)や、歯ごたえのあるもちっとした生地に優しい甘さのミルククリームを挟んだ「ミルクバゲット」(250円・写真左下)など、魅力的なパンばかり。
どれも個性が際立っていて、それぞれに違うおいしさがあるので、全種類試してみたくなります。特定のパンに人気が集中することはなく、常連さん1人ひとりに自分のお気に入りがあるというのも、どのパンもおいしいことの裏づけではないでしょうか。
「お客様としっかり向き合いたくて住宅街にお店を出した」というオーナーさんのあたたかい人柄と、選ぶ楽しさ、味の三拍子が揃う「ひよこぱん」。日によっては11時頃に売り切れてしまうこともあるそうなので、早めの来店がおすすめです!
所在地:東京都大田区中馬込2-5-10 第二飯島ビル1階
アクセス:都営浅草線「馬込」駅から徒歩約8分
TEL:03-6417-1254
https://www.instagram.com/hiyokopan.magome/
今回巡った、馬込にある4つのパン屋さんは、いずれも小さなお店ですが、それぞれにまったく違った個性があり、地域のお客さんに愛されていることがひしひしと伝わってきました。行くだけでほっこりとした気分になれるパン屋さん。複数のお店を巡って、お店の雰囲気やパンの見た目、味わいなどを比べてみると、パン屋さんってとても奥が深いんだなぁということがわかります。
今回ご紹介した馬込は、池上、洗足池とともに「馬池洗(まいせん)」と呼ばれ、大田区の古くからの景勝地として知られるエリア。馬込を訪れたら、都会のオアシス・洗足池公園や都内屈指の梅の名所・池上梅園など、馬池洗の人気スポットにもあわせて足を運んではいかがでしょうか。
本記事のライター:春奈
プロフィール:
大学時代に旅に目覚め、海外渡航歴はアジア・ヨーロッパを中心に61カ国。なかでも、「旧市街」「歴史地区」と呼ばれる古い町並みに目がない。旅好きが高じて、総合旅行業務取扱管理者資格を取得。現在フリーランスライターとして活動中。
これまでに和歌山県、東京都、ドイツ、福岡県、香川県での居住歴があり、大田区にも住んでいたことがある。
監修:松本里美/三好順