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  • 2023.6.7
  • グルメ

彼女とのデートには絶品「和スイーツ」が大正解!? 池上本門寺前で食べ比べ

なんでも、東京都大田区の池上に、美味しい和スイーツを味わえるお店がいっぱいあるらしい! 上野でも、浅草でも、銀座でもなく、池上……。古くからの景勝地として知られるこのエリアは、馬込、池上、洗足池の頭文字を取って「馬池洗(まいせん)」とも呼ばれ、街歩きにもぴったりの場所だとか。

もしかすると、彼女をちょっと喜ばせることができるような、新しいデートスポットとして魅力的かも……? そう思った僕は、ある初夏の日、池上をひとり訪れて、和スイーツの食べ比べをしてみることにしました。久寿餅からあんみつ、かき氷、あんまきまで、池上の和スイーツを食べてみた結果は、はたして!?

都内でありながら、都内でないような、池上の街

美味しい和スイーツのお店が集まるのは、東急池上線の池上駅から歴史ある池上本門寺にかけてのエリア。まるでローカル線みたいな池上線を池上駅で降りると、あれっ、なんだか時間の流れ方がちょっとゆったり。ここは東京の、それも23区内であるはずなのに、僕が知っている東京よりも、どこかのんびりした雰囲気が漂っているのです。

交差点を渡り、「本門寺通り」と書かれた門をくぐると、街中を抜ける風がさらに優しくなった気がしました。街路樹の緑も、花屋さんに並んだ色とりどりの花々も、そして街を歩く人々も、みんな穏やかで、気持ちがホッとする……。

都内でありながら、どこか遠くの街まで来たような、不思議な感じ。この道を彼女と歩けば、会話の花も自然と咲いていきそうだなぁ。そんな想像をしているうちに、1軒目の和スイーツのお店に辿り着きました。

ぷるんぷるんの食感が絶妙!「池田屋」の久寿餅

まずやって来たのは、池上本門寺の参道にある「池田屋」。立派な店構えに長い歴史を感じつつも、ふらっと気軽に立ち寄りやすい風情があります。

ここは池上デートの1軒目としても相応しいかもしれない……。そう思って眺めていると、店頭に掲げられた「くず餅」の字が、よくある「葛餅」ではなく、「久寿餅」という字であることに気づきました。どんな一品に出会えるんだろう、と静かに期待が高まります。

店内へ一歩足を踏み入れると、落ち着いた心地良い空間が広がっていました。天井からはお洒落な照明が下がり、窓からは外の光もふんだんに入ってくるので、上品ながらも明るい雰囲気に包まれています。テーブルの間隔も広めなので、ここなら彼女とゆったり会話を楽しむこともできそうです。

さっそく「池田屋」の1番の名物、気になっている「久寿餅」を食べることにしました。注文したのは、シンプルな「きなこかけ」の久寿餅(600円)。テーブルに運ばれてきた途端、きなこの甘くホッとする香りが僕の鼻腔をくすぐり、口の中にじゅわっと湧いてくるものがあったほど。

とろりと黒蜜をかけて食べたその味は、めっちゃ幸せ……と思わずつぶやきたくなるような美味しさ。彼女と一緒だったら、本当にお互いにつぶやいてしまうかもしれません。ぷるんぷるんの食感の久寿餅が絶妙で、程よい弾力がありながら、つるっと喉ごしが気持ち良いのです。きなこの香ばしさ、黒蜜の濃厚な甘さも、久寿餅の味わいをさらに引き立ててくれます。

店主さんに話を聞くと、葛粉から作る関西の「葛餅」に対し、関東では小麦粉を発酵させて作る「久寿餅」が一般的なんだとか。それにしても、名前からして縁起が良さそうで、食べるだけで幸せな気持ちになれるのも頷けます。

「池田屋」の久寿餅は、ゴマの風味が豊かな「黒ゴマきなこかけ」(600円)もあるので、それぞれ注文して、彼女と半分ずつ食べるのもいいかも、と思いました。

窓の外を見ると、古民家のような佇まいの酒屋さんがあって、都内の風景とは思えない情緒が漂っています。

このお店だったら、遠いどこかへ旅行に来たような気分を味わえて、彼女に少しの癒しをプレゼントしてあげることができるかも。最近仕事が忙しそうな彼女の顔を思い浮かべて、そんなことにも気づきました。

「池田屋」は、店主さんの気さくな人柄も素敵。このお店が愛されているのは、久寿餅の美味しさはもちろん、店主さんの温かさによるところも大きいのかもしれません。

「お客さんはご年配の方が多いですね。でも最近、若いカップルの方も増えてきました」

そんな話を聞いているうちにも、お土産用の久寿餅を買いに、お客さんが次々に訪れます。このお店の久寿餅は、世代を問わず、人を幸せな気持ちに包んでくれる味なんだろうなぁ。まさに、池上デートの始まりにぴったりな、正統派な和スイーツのお店でした。

池田屋

所在地:東京都大田区池上4-24-1
アクセス:東急池上線池上駅から徒歩6~7分
TEL:03-3751-0154
http://kuzumochi-ikedaya.cafe.coocan.jp/

お店を出ると、そこは小学校の通学路で、ちょうどランドセルを背負った小学生が通り過ぎていきました。そしてその横を自転車でゆっくり走り抜けていく、若い男性やおじいさん……。この街の当たり前の日常が、どこか旅先で感じる非日常のようで、次のお店へ行くまでの道のり、のんびり街歩きを楽しむのも良さそうです。

まるで涼しげな宝石箱!「浅野屋本舗」のあんみつ

2軒目に訪れたのは、参道を池上駅の方へと少し戻った場所にある、甘味処「浅野屋本舗」。創業は宝暦2年(1752年)という老舗ながら、外観は美しくお洒落で、新しいカフェのよう。ここなら彼女も、喜んで一緒に入ってくれそうです。

お店の入口の横には、「氷」と書かれた暖簾が掛かっていました。夏の日のデートなら、ここがオアシスのような凉ポイントになってくれるかも……と、彼女と日傘を畳んで入っていく光景を思い浮かべました。

こぢんまりとした店内は、シンプルで清潔感のある雰囲気。気取っていないところが逆に居心地が良く、彼女にもゆったりと寛いでもらうことができそう。「外、暑かったね~」、「とりあえず冷たいもの食べよっか!」、自然とそんな会話が始まっていきそうな気がします。

彼女が1番喜んでくれそうなものはどれだろう……と考えた末、「白玉抹茶クリームあんみつ」(870円)を選びました。やがて運ばれてきた一品を見て、これなら間違いない!と心の中で叫びたくなってしまったほど。それはまるで、色とりどりの宝石を散りばめたみたいな、目にも鮮やかなあんみつだったのです。それも、周囲の気温が5℃くらい下がりそうな、清涼感たっぷりの宝石箱です。

さっそく食べてみると、心地良い弾力がある白玉も、甘さが絶妙な抹茶アイスクリームも、濃厚な風味が広がる粒あんも、そして輝くように美しい寒天も、すべての素材が生き生きとした美味しさ。食べるのがもったいないけれど、スプーンを動かす手が止まらない……、そんなあんみつなのです。

寒天は三宅島や新島産のテングサから作り、粒あんは北海道産の小豆、黒蜜は沖縄県産の黒糖と、全国各地の素材をふんだんに使用しているんだとか。まさに、食べられる宝石をいっぱい詰め込んだような一品だったのです。

もうひとつ、「氷」の暖簾を見たからには、かき氷も試しておきたいところ。注文したのは、彼女が好きそうな「いちごみるく」のかき氷(750円)。

運ばれてきたのは、ほのかにピンク色に染まった、優しい色合いのかき氷でした。スプーンを入れてみると、まるで新雪のようにふんわりとしていてびっくり。一口食べたその味は、甘すぎることなく、冷たいいちごみるくの美味しさが口いっぱいに広がります。もう夏が来たんだなぁ……と、しみじみ呟きたくなったほど。

もしもデートが暑い日だったら、この1杯のかき氷こそ、最高の清涼剤になってくれるかも。ホッと安らいだ彼女の笑顔を想像して、すでに嬉しくなっている自分がいました。

「今日より明日、美味しいものが作れるように」

そう語ってくれたのは、12代目の若き店主さん。笑顔の優しい店主さんは、このお店の落ち着いた雰囲気と美しく重なります。

最近は、子供を連れた若いお母さんたちもよく来てくれるそう。……と、そんな話を聞いていると、自転車に子供を乗せたお母さんが、ちょうどあんみつを買いに訪れたところでした。テイクアウトのあんみつを2つ買うと、すぐにひとつを子供に渡すお母さん……。

「子供たちが大人になっても、またここに来てくれるように」

嬉しそうにあんみつを眺める子供の姿を見ていると、店主さんのその言葉は、本当に実現しそうな気がしました。

浅野屋本舗

所在地:東京都大田区池上4-32-7
アクセス:東急池上線池上駅から徒歩4分
TEL:03-3753-7539
https://www.yamachou-asanoya.com/

次のお店を目指し、池上の街を歩いていると、この街がどこか気持ちを穏やかにしてくれる理由に気づけたように思いました。それは、いろんなものが「ありすぎない」こと。たくさんのものに溢れた東京にあって、この池上には、良い意味でいろんなものがありすぎない。刺激ではなく、癒しを求めるデートスポットとして、すごく魅力的かもしれないなぁ……。

絶品のもっちり&しっとり!「あんまきのだるまや」のあんまき

最後に訪ねたのは、池上駅前から延びる商店街にある「あんまきのだるまや」。明るくオープンな雰囲気で、店頭いっぱいに掲げられた「あんまき」の写真を見ると足を止めずにはいられません。テイクアウト専門のお店なので、池上デートの最後にふらっと立ち寄るのにもぴったりかも。

それにしても、あんまきといえば愛知県の名物。都内ではちょっと珍しいあんまきのお店に、彼女もワクワクしてくれそうな予感がします。

さっそく注文したのは、「あんまきのだるまや」自慢の3種類のあんまき。美しくきつね色に焼かれた生地に、たっぷりのあんこがくるっと巻かれたフォルムが可愛らしい!

まずは、1番人気の「カスタードあんまき」(270円)から。一口食べると、濃厚なカスタードクリームと甘さ控えめのあんこが口の中で溶け合って、絶妙な和と洋のコラボレーション。女性に人気なのも、このカスタードあんまきなんだとか。

次は、シンプルな粒あんの「あんまき」(250円)。たっぷりのあんこが入っているのに、あっさりとした甘さで食べやすい。あんこの美味しさを存分に味わうなら、このあんまきが良さそうです。

そして、リピーターが多いという「チーズあんまき」(270円)。チーズクリームの塩気があんこの甘さとマッチして、程よく甘塩っぱい味わい。それでいて、ぺろっと食べられちゃう美味しさなのです。

あんまきの生地は、もっちりと柔らかく、しっとりと優しい関東仕上げ。あんまきを初めて食べるかもしれない彼女にとっても、これなら美味しく食べてくれそうです。

店頭を眺めていると、期間限定の「苺カスタードあんまき」(390円)を発見。生地の間から苺がちょこんと顔を出していて、彼女も目を惹いてくれそうなチャーミングさ。

食べてみると、一口目の苺から始まり、カスタードクリームにあんこと、まさにいいとこ取りのあんまきでした。しかも、最後に嬉しいまた苺。これは絶対、彼女も好きそう!

食べ歩きはもちろん、お土産としてあんまきを彼女に買ってあげるのもいいかも。紙袋に描かれただるまも可愛らしく、デートの最後に手渡せば、きっと喜んでくれるかな?


明るい笑顔が素敵な店主さんは、かつて名古屋に住んでいた経験があるんだとか。

「名古屋の美味しい味を、関東の人にも知ってほしくて」

その熱意は多くの人に届き、今では関東だけでなく、はるばる新潟県から買いに訪れる人もいるそう。このお店のあんまきの美味しさには、それくらい人を惹きつける魅力があるのでしょう。

印象的だったのは、買い物の途中で立ち寄って、ごく当たり前のように、あんまきを買っていく人の姿でした。もしかすると、あんまきはもう、池上という街の新しい名物になりつつあるのかもしれません。

あんまきのだるまや

所在地:東京都大田区池上7-1-10
アクセス:東急池上線池上駅から徒歩1分
TEL:03-6410-3553
https://anmaki-darumaya.com/
※7月18日(火)~8月末まで夏季休業

美味しい和スイーツが集まる池上は、都内に隠されたデートスポット

和スイーツの食べ比べを終え、池上の街を歩きながら、心の中で感じ入っていました。都内に、こんな隠されたデートスポットがあったんだ、と。

ぷるんぷるんの「池田屋」の久寿餅も、宝石箱のような「浅野屋本舗」のあんみつも、しっとり優しい「あんまきのだるまや」のあんまきも、どれも一口食べただけで、自然と笑顔がこぼれてしまう美味しさでした。そしてどのお店も、店主さんの温かい笑顔に、思わず心動かされました。

遠くへ旅行に行かなくても、ちょっと電車に乗ってこの池上を訪れるだけで、遠くへ旅行に来たような気持ちになれる。きっと池上は、そんな街なのです。

ここなら安心して、彼女を誘い、一緒に和スイーツを食べ歩くことができそう。久寿餅に、あんみつに、あんまき。彼女が1番笑顔になってくれるのは、どれかなぁ……。

そんな想像をしながら、池上デートへと誘うメッセージを、彼女に打ち始めている自分がいました。

本記事のライター:手塚 大貴

プロフィール:
沢木耕太郎氏の『深夜特急』がきっかけで、世界を旅するバックパッカーに。オリンピックやサッカーワールドカップなど、スポーツ観戦の旅も好き。現在、旅行ライターとして活動中。旅エッセイやコラムも書きます。
大田区でお気に入りの場所は、桜坂、多摩川の土手、羽田空港の第3ターミナル。


監修:松本里美/三好順