工場と共に歩む街
【工場で働かれている方インタビュー・
(株)三陽機械製作所 青田光弘さん】

ーー働かれている工場では、主にどういった商品や加工を扱われているのかについてお聞かせください 。

主にマシニングセンタと旋盤を使って金属加工しています。ほかの町工場でも金属を切ったり、曲げたり、溶接したりしていますが、ここでは「切削加工」、削ることを専門に行なっています。手作業というより、「数値制御」の機械、プログラミングした通りにものを削る機械を使って作業しています。これにより、安定した生産が可能となり、「同時五軸」制御の機械を使って複雑な局面を削り出すこともできます。何を作っているかというと、主に空気圧縮機(エアコンプレッサー)の部品です。空気圧縮機は、圧縮した空気の圧力で、器具や部品を清掃する、シリンダーを動かしてロボットを動かすといったことができ、大抵の工場に設置されています。製作した部品を空気圧縮機の大手のメーカーさんに納めています。

ーーオープンファクトリーなど、工場(あるいは個人)で取り組まれている地域の活動について教えて下さい 。

まずは『オープンファクトリー』。さらにここから派生して仲間まわしラリー企画の実施を通して発足した『チーム仲間まわし』としても活動しています。さらに『下町ボブスレー』といった活動は、作ったボブスレーを五輪の舞台で活躍させたいという思いのもと取り組んでいます。ソチ五輪、平昌五輪にも挑戦しましたが、本大会での滑走は叶いませんでした。今は次の北京五輪に向けて、部品の改良を行うとともに、代表選手にボブスレーを使ってもらうために海外のチームと交渉を進めています。

ーーオープンファクトリーなど、地域の活動に取り組まれている理由をお聞かせください。

三陽機械は金属を削る専門の会社ですが、ものづくりをするうえで溶接などを削る以外の工程段階もあります。様々な工程段階が必要な製品に対し、三陽機械一社での対応が難しい場合があります。そういったニーズに答えられない時に仲間同士のネットワークがあることは非常に助かります。100%仕事ではない活動で集まった人たちとは、より仲良くなりやすいです。普通に外注する形でも対応してもらえますが、お付き合いがあるところだと、少し無理なお願いを聞けたり、聞いてもらえたり、お互いに助け合える関係を築くことができます。

ーー日々の生活・お仕事の中で地域の人々との関わりはありますか?

三陽機械は武蔵新田駅の北側にあります。工場の敷地はそれほど大きくなく、トラックに荷物を載せようとすると隣の家の前に止めることになります。駐輪場もお借りしています。トラックの到着が夜遅くなってしまったときはフォークリフトのクラクションを鳴らしながらの作業はできません。周辺に迷惑をかけないように気を遣っています。普段から機械を使う際も音がするので窓を閉めています。日ごろから挨拶をしたり、声をかけたりしてご近所さんとの関係性も大切にしています。

ーー工場と住宅のある街ならではと感じた光景についてお聞かせください。

お昼の時間になると、青い作業服がまちでたくさん見受けられます。三陽機械や伊和起ゲージさんなど青い作業着の町工場が多いからです。以前コンビニで青い作業着の人がお弁当を受け取り忘れたことがありました。店員さんがうちの従業員だと思い、声を掛けてくれてそのお弁当を受け取ったのですが、結局購入した人はいなくて。おそらく別の青い作業着の町工場の方だったのだろうと思います(笑)。

ーー最後に、この街のお気に入りスポット(お店も含む)についてお聞かせください。

『Marco』というこじんまりした手作りサンドイッチ屋さんです。塚崎製作所の横の土管や金属の並べられた細い路地を奥へ進んでいくとあります。厚みのあるパンと中身がつまったボリュームあるサンドイッチが500円ほどで販売されています。惣菜系・スイーツ系どちらも充実しています。サンドイッチひとつでもおなかが満たされます。

サンドイッチ屋さん『Marco』

暮らす方と工場で働く方で互いに思いやりをもって、支えながら歩んでいるんですね。この街の人々の温かさを改めて感じました。お話ありがとうございました!(聞き手:的羽佑菜)

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